毎日飽きることなく、お昼のみならず、間休みの時も、つねに誰かの陰口を言っている先輩がいます。
どこからそのネタが無尽蔵に生まれ続けるのかと、疑問でした。
その陰口は、内容がハッキリと聞き取れず、何を話しているのかわかりません。しかし、陰口を言っていることはハッキリとわかります。

言い方です。

声デカすぎて陰口になってない

隠す気がないんですよ。陰口なのに。
もうちょっと、うしろめたさを感じる話し方なら、ぼくもそれほど不愉快にはならないのですが、あれだけわかりやすく大きな声で、ネガティブな口調で話していたら、同じ部屋の全員に聞こえます。

マジで声がデカイんですよ。
声が大きいおばあちゃんは、耳が悪く、自分の声が聞こえないから、声量の加減がわからなくなってるケースがあります。
そういうことでしょうか。ぼくより少し上くらいなんですが。

口調のことに触れましたが、
「Kさんいつも遅いでさぁ〜。ほんと勘弁してほしいわ〜。嫌いやわ〜あの人〜」
こんな口調です。ずっと。語尾伸ばす感じわかります?

これが大音量で、
十数人がお昼を食べている部屋に響き渡っている
ので、ぼく以外にも不愉快に思ってる人がいるかもしれません。
や、だとしても、他人のために声を上げるほど使命感のある人間ではないので、ぼくは自分が我慢できるうちは黙っているつもりでした。

きゃろちんは突然キレた

ほら。不満やストレスが長い月日を経て蓄積されていって、ある日ある時とつぜん、なにかのプッツンポイントに障った瞬間。

パーン。ってなることありますよね。

あれです。

いつものようにいつもの場所で、彼は、
「も〜〜ほんまに勘弁してほしいわ〜〜」
と誰かの陰口になってない陰口を。

ニワカの関西風な喋り方もかなり腹立ちます。

そこでぼくのプッツンポイントが、唐突に現れました。

彼は会話の終わりに、拡声器でも使ってるのかってくらいにワザとらしい大きさのため息をつきました。
「......はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!もう〜っ...」

はい。ここ。ここです。
ここでキレました。わたくし。
キレさせていただきました。
よろしくお願いします。

「あ。はあ」

ぼくは彼の陰口を無理やり聞かされながらすすっていたカップラーメンの汁を、グイッと飲み干して、あたかもそれをゴミ箱へ捨てに行くついでに立ち止まった風で、彼の横に歩みを進めました。

ツカツカツカ。

「あの〜。Mさん。すみません。ちょっと気になるのでお尋ねしたいのですが、先ほどからされているそのお話って、ネガティブなお話なんですか?」

なるべく丁寧に、相手の感情を逆なでない言い方を試みました。彼の気を逆なでて、大袈裟な事態になれば、ぼくもかれも立場が危うい。クビはごめんです。

すると彼は、顔をこちらに向けることなく、視線だけを合わせ、

「さあ。知らないっす」
と言いました。

プッチーーーーン(2回目

思わず、挑発的な口調で
「知らない?んですか?」
と。

自分大人気ないなぁと思いながら、こう続けました。

「あの〜ですね。この場所にいない人の話を、それも悪い内容の話だとしたら、聞こえてしまうと複雑な気持ちになるんですよ。Mさん声が大きいので」

本心からの言葉でした。
常識的な人なら、
「陰口を言われている人がかわいそう」なんていう理由で注意するのかもしれません。どうだか。わかりませんが。

ぼくは常識ってものを持ち合わせていないので、
あくまで自分が効いていて不愉快だから、やめてくれ

という動機で話しました。

どんな理由にしても、彼を怒らせるつもりはありませんし、陰口そのものは悪いことではないと思います。

ただ、人が大勢いる室内で、端の人にまで聞こえる声で言うことに、腹を立てていました。
ぼくも他人の話を別の第三者とすることがありますが、他の人がいない場所で、会話相手にしか聞こえないボリュームで話します。

誰かが近くに来たらやめますし。

そんな理由ですので、正義感を振りかざすつもりもなく、やんわりとアラートをチラつからせるつもりでした。彼の自尊心を傷つけることなく。です。

そんなぼくの気遣いを、一瞬でブチ消された彼のクールレスポンスがこちら

「...あ。はあ」

凍りついたのどかな昼食のお時間

申し訳なかった。
ぼくが大人になって、もっと別の方法をとっていれば、あんなに冷たい空気を作り出すこともなかった。

特に反省した点は、いつも良くしてくれている先輩が、かなりブルーな空気を出していたこと。
先輩のオーラからは、
「それ言うなよ......」
みたいなメッセージを感じてしまいました。

どうすりゃよかったのか

就労継続支援の事業所は、その性質と目的から、計画相談員というサポーターが存在します。その方に相談するという手もありました。

もちろん上司には、数回にわたって相談していましたが、Mさんが陰口を言っているとチクったところで、上司は確かめようがありません。

Mさんは上司の前ではいつも礼儀正しく、気さくで、ポジティブな印象を抱かれていてもおかしくありません。

その辺の狡猾さも、ぼくのコンニャローポイントです。

では、ほんとに、どうすりゃよかったのか。

スマホのボイスレコーダーで、Mさんの陰口の一部始終を録音して上司に聞かせる。

という、クズ度100点満点の方法が頭をよぎりますが、ほんとに最適解が思いつきませんでした。

こういうのって、社会人の諸先輩はどうやってクリアされているのでしょう。
放置がベターなんでしょうか。
泣き寝入り?

やるせないですね。

これだから人間世界は無理ゲーだと、思うんです。
リタイアしたいっす。